あの日の声を探して フランス映画
この映画はとても見たかったものでした。台風で予定がなくなったこともあり、幾つか借りたレンタルDVDの中の一枚です。
第2次チェチェン紛争の時の物語。両親を殺されて声が出なくなった少年が主人公です。
伏線で、ロシア軍に強制的に入隊させられた若者の人生が描かれています。
本当に書くって難しいですね。思い切りネタバレしてストーリーを全部書いて追いたくなります。少年の味わった悲しみというのは、ただ、悲しそうでした、という言葉ではあまりにも軽すぎて、どう表現していいかわかりません。
国際支援の現場に立つ人と、国連の立場に立つ人の認識の違いや、ものごとを他人事として受け取られていると感じることの寂しさというか虚しさというか、その表現をこの映画はしてくれています。
その感覚は実は現実的な、誰でも味わうもので、私も誰かに無意識な態度で与え続けているものなのかもしれないと思いました。
そしてその価値観の相違というか、人の立場に立てないということは、大きな組織でも身近な関係でも存在するものなのだと、無神経に自分のことを考えながら生きているということを、誰かが傷つきながら感じているんだと思いました。
他人事には感じられませんでした。
強制的に軍に入ることになった若者の心が、愛を忘れていくというか、考えに染まっていくというか、考えなくなるというか、その様子もいたたまれなかったものがあります。人はすぐに自分で考えることをやめるんだ、恐怖と不条理に壊れていくものがあるんだと思いました。
心を壊さずに生きるためにはどうすればいいんだろう、自分の中に何があれば壊れないで生きられるのだろうと、しばらく思いました。きっとそれが信念のようなもので、それを心の核につくらないと、立ち直れなくなるような気がしました。
登場人物が流す無言の涙は、胸が痛くなりました。少年の悲壮な眼差しも、ラスト近くで見せた心の底からの笑顔も、印象的でした。